
なぜ複数マテリアルが必要なのか?(ハンドバッグの例)
一つのメッシュで構成されたハンドバッグモデルにおいて、本体のレザー(皮)とバックルなどの金属金具は、光の反射の特性(シェーダー)が全く異なります。
- 皮(レザー): 拡散反射が主で、細かいシワや凹凸(ノーマルマップ)を持ち、粗さ(roughness)は比較的高い(光を拡散する)。
- 金属(メタル): 鏡面反射が主で、メタリック(Metallic)値が1.0に設定され、ラフネス値が低いと鋭いハイライトが出る。
これら異なる質感の特性を一つのオブジェクト内で実現するためには、パーツごとに異なるマテリアルを割り当てる操作が不可欠です。これにより、モデリングの手間を増やすことなく、高品質なレンダリング結果を得ることができます。
ゲーム・インタラクティブの分野ではマテリアルの数は少なく抑える
Blenderやその他のソフトでも、1オブジェクトに複数のマテリアルを持つことが出来ますが、特にゲーム業界やVRなどのリアルタイムグラフィックスの分野では、ドローコール(簡単に言えば仕事量)を削減するため、1オブジェクト1マテリアルの原則、あるいはマテリアルの総数を極限まで減らす技術が必要とされます。複数のマテリアルを分ける代わりに、テクスチャによるアトラス化や、UDIMのような単一シェーダー内で複数の高解像度テクスチャを扱う技術で質感をコントロールします。
今回はマテリアルを複数使用しますが、Blenderのような柔軟なツールを使う場合でも、描画負荷を意識したアセット管理というプロの視点を持ち、効率的なワークフローを目指すことが、レベルアップを志す皆さんに必要になる視点です。
マテリアルスロットの概念
マテリアルスロットはマテリアルの入れ物であり、面(ポリゴン)単位で割り当てるという方法が基本概念です。
ハンドバッグモデルでの割り当て手順
この手順では、すでにモデリングが完了し、本体と金具が一体のメッシュになっていることを前提とします。

マテリアルスロット(2種類のマテリアル)を登録
まず、皮と金属の2種類のマテリアルをオブジェクトに登録します。

Shadingタブをクリックします。
マテリアルパネルを開く

ハンドバッグのオブジェクトを選択し、「マテリアルプロパティ」タブ(赤い玉のアイコン)を開きます。
皮のマテリアルの設定(スロット1)

初期のマテリアルスロットを作成します。上面のタブが空欄であることを確認し、+新規をクリックします。

「M_Leather_Body」などと名前変更します。

本体に使用する皮のPBR(物理ベースレンダリング)シェーダーを設定します。
金属マテリアルの設定(スロット2)

スロットリストの下にある [+] ボタンをクリックして、新しいマテリアルスロットを追加します。

追加されたスロットを選択し、[新規] ボタンで新しいマテリアルを作成し

「M_Metal_Hardware」などと名前を付けます。

この金属マテリアルに対し、Metallic値を1.0に、Roughness(粗さ)値を0.1〜0.3程度に設定し、金属らしい光沢を準備します。
| スロット | マテリアル名 | 割り当て対象 | 特性(シェーダー設定) |
| 1 | M_Leather_Body | バッグ本体の面 | ベースカラー、ノーマルマップ、ラフネスマップ(テクスチャ等) |
| 2 | M_Metal_Hardware | 金具部分の面 | Metallic: 1.0、Roughness: 0.1〜0.3 |
ポリゴンへのマテリアルの割り当て(金具部分の選択とアサイン)
次に、金属マテリアルを金具の部分にのみ適用します。
編集モードへの切り替え

オブジェクトを選択した状態で Tabキー(業界互換キーマップでは3キー)を押して「編集モード(Edit Mode)」に切り替え、面選択モードにします。
金具の面の選択

ビューポート上で、バックル、ファスナーの引き手、底鋲など、金属として表現したいすべての面(ポリゴン)を慎重に選択します。
シームやシャープエッジを活用して、Lキー(業界互換キーマップではダブルクリック)でリンクした面を選択すると効率的です。
スロットの選択とアサイン

「マテリアルプロパティ」パネルに戻り、先ほど金属マテリアルM_Metal_Hardware)を登録したスロット2を選択します。

スロットの下にある [割り当て (Assign)] ボタンをクリックします。

Tabキー(業界互換キーマップでは4キー)でオブジェクトモードに戻ります。
レンダリングまたはビューポートの「マテリアルプレビュー」で確認すると、本体は皮の質感、金具は金属の質感として、正確に分離して表示されているはずです。
専門的視点:質感の分離がもたらす表現力
この「複数のマテリアルアサイン」は、単なる色分け以上の、クリエイティブな表現の基礎となります。
- シェーダーノードの独立管理: スロットが分かれていることで、皮には複雑なSSS(Subsurface Scattering:サブサーフェススキャタリング)のノードを組み込み、金属にはフレネル反射を強調するノードを組み込むなど、マテリアルごとに最適なノードツリーを独立して設計できます。
- テクスチャセットの分離: 皮の部分には4Kのレザーテクスチャを、金属の部分にはより解像度の低いシンプルな金属テクスチャのみを使用するなど、リソース(VRAMやメモリ)を効率的に管理できます。
3DCGを学ぶ皆さんにとって、このテクニックは「リアリティを追求するための第一歩」です。
単に操作を覚えるだけでなく、「なぜこの操作が必要なのか」「質感の分離が最終的な表現にどう影響するのか」という論理的な思考を重視してください。
まとめ
- ハンドバッグの「皮」と「金属」のように特性が異なる質感を表現するには、マテリアルスロットでマテリアルを分離しました。
- 本体(皮)にはテクスチャが複雑なスロット1を、金具(金属)にスロット2を登録しました。
- 編集モードで金具のポリゴンを選択し、[アサイン] することで、一つのオブジェクト内にリアリティのある質感のコントラストを生み出しました。
- 質感の分離は、その後のシェーダー設計やリソース管理において、より高度な表現を可能にするプロフェッショナルなワークフローの基礎です。
