Blenderでのレンダリングは、3Dモデルを最終的な画像として出力するためのプロセスです。ここでは、室内アセットを対象に、レンダリング用のカメラの設定方法、Cycles Renderを使用した静止画レンダリングの方法を解説します。以前紹介した質感設定とライティングのページに基づき、レンダリングに特化した内容をお届けします。
カメラの設定
最初に、カメラを配置して、レンダリングする構図を決定します。カメラは、初期状態で既に用意されているものを使用します。
カメラの移動
Blenderでは作業用のビューポートとレンダリング用のカメラは独立しています。
予めレンダリング時のカメラ位置をカメラオブジェクトを選択したうえで設定する必要があります。

ビューポート右側の
してカメラビューに切り替えます。ビューポートにレンダリング用のフレームが現れ、レンダリング用カメラに画面が切り替わります。

(切り替え)アイコンを押すことで、カメラビュー上の操作で直接カメラ位置を変更できます。

カメラオブジェクトが複数ある場合、
選択されている(直前に選択された)カメラが使用されます。
アウトライナ―などで確認しましょう。

ビューポートを2画面にすることで、カメラオブジェクトを選択した状態でカメラ位置を変えることも可能です。
通常のオブジェクトと同様に移動、回転で変更を行います。
カメラパラメーターの設定
カメラの詳細な設定はプロパティエディタ―で行います。初学者が意識する箇所を以下に記述します。

カメラオブジェクトを選択した状態でプロパティエディタ上の緑色のカメラアイコンをクリックします。
カメラのタイプ(Type)

Blenderでは、カメラタイプを
透視投影(Perspective)
平行投影(Orthographic)
パノラマ(Panoramic)
から選択できます。
透視投影(Perspective): 3D空間における現実的な視点を再現します。

平行投影(Orthographic): 視野に奥行きがない視点を再現し、等距離で対象物を見ることができます。

パノラマ(Panoramic): 360度のパノラマビューや球面レンダリングに使用されます。

パノラマ画像を.EXR形式で保存することでHDRI画像を生成することが出来ます。
焦点距離(Focal Length)

焦点距離は、カメラレンズのズーム効果をシミュレートします。値が小さいほど広角になり、値が大きいほどズームインされたビューになります。
デフォルト値は50mmです。
広角レンズ(短い焦点距離)

30mm
より広い視野が得られ、背景が遠くに見えます。
望遠レンズ(長い焦点距離)

120mm
視野が狭くなり、背景が圧縮されて見えます。
範囲の開始、終了(Clip Start,End)
カメラからの距離でオブジェクトをクリッピング(非表示)出来ます。初心者のうちは逆に表示されなくなることで困るケースが多いので、レンダリング時間を最適化する場合を除いて、触らないようにします。
- 範囲の開始(Clip Start): この値より近いオブジェクトはレンダリングされません。
- 終了(Clip End): この値より遠いオブジェクトはレンダリングされません。


ビューポート表示(Viewport Display)
ビューポート上でのガイドが表示されます。構図を設計する際に視認性を高める補助機能です。レンダリングには影響されません。 おさえておくと良い項目を記述します。

サイズ(Size)
カメラのフレーミング範囲が確認しやすくなります
リミット(Limits)
後述する被写界深度のピントが合う個所を確認できます
外枠(Passepartout)
画面外を暗くすることで視認性を高めます
コンポジションガイド(Composition Guides)
三分割法や黄金比で構図を確認できるガイド線を引いてくれます。

被写界深度(Depth of Field)
被写界深度は、カメラの焦点が合っている範囲を制御します。特定のオブジェクトに焦点を合わせ、その前後をぼかす効果を得られます。F値(F-Stop)によって調整します。

- 撮影距離(Focus Distance): 焦点を合わせるオブジェクトまでの距離を設定します。
焦点のオブジェクトを指定することで、指定したオブジェクトに焦点を合います。 - F値(F-Stop): 値が小さいほど、背景がよりぼけます。(現実のカメラの挙動と異なり、明るさは変更されません)。
- 絞り羽根:ぼけの形状が変化します。

OFF

ON
セーフエリア(Safe Areas)

カメラビュー内で、レンダリングの際に重要なエリア(表示されるべきエリア)を確認するためのガイドです。映像制作などで構図を正確に調整するのに使用されます。

レンダリング設定
Blenderでレンダリングする際のプロパティを設定します。レンダリング時の画質と計算時間に関わる重要な項目です。設定項目は多岐にわたり混乱するかもしれません。初学者はまず以下のパラメーターを意識してください。理解が深まり更なる効率化とクオリティアップを目指す際に詳しく調べていくことをお勧めします。

レンダーエンジン(Render Engine)の選択
最初に使用するレンダーエンジン(レンダラー)を設定します。BlenderにはEeveeとCyclesの2つの主要レンダラーがあります。
今回はフォトリアリスティックな画像を生成する為、質感設定、ライティングで用いた時と同様にCyclesを使用します。
- Eevee: 高速なリアルタイムレンダリングに適したレンダラー。アニメーションやプレビュー向け。
- Cycles: レイトレーシング技術を使った物理ベースのレンダラーで、リアリスティックな表現に最適。

画面右上のプロパティエディタで、レンダープロパティ(カメラアイコン)をクリック。
レンダーエンジン(Render Engine)をCyclesに設定。

デバイス: GPUが利用可能であれば、GPU演算を選択するとレンダリングが高速化されます。
サンプル数(Samples)
レンダリング時のピクセルごとの計算精度を決める設定です。サンプル数が多いほどノイズが軽減され、クオリティが向上しますが、レンダリング時間も増加します。

1024
04m18s

4096
09m28s
- ビューポート(Viewport)とレンダリング(Render)の2つに設定でき、どちらも異なるサンプル数を指定可能。
- 初心者向けの推奨サンプル数: ビューポートでは512-1024、最終レンダリングでは1024-2048程度がバランスが良いです。
ノイズしきい値(Noise Threshold)にチェックを入れた際のパラメーター
ノイズしきい値にチェックを入れることでさらに細かい調整が可能です。レンダリング時間が長い場合は個別に設定して最適化を試みます。
最適な設定はシーンによって異なるので、プレビューやテストレンダリングを行いながら調整することをお勧めします。

- ノイズしきい値(Noise Threshold):
値を小さくするとより高品質な画像を生成します。レンダリング時間は長くなります。0.01~0.1を適正値として設定します。 - 最大サンプル数(Max Samples):
1500~2000が初心者にとって標準的です。高品質な画像が必要な場合は3000以上に設定します。 - 最小サンプル数(Min Samples):
値を大きくすると、最低限必要なサンプル数が増え、品質が向上する可能性があります。10~50程度で調整そ行います。
デノイズ(Denoise)
画像処理によってレンダリング時のノイズを除去する機能です。ONにするとざらついた印象を軽減してくれるのでサンプル数を減らしても高品質な結果が得られます。

デノイザー(Denoiser)
NLM(Non-Local Means)と OpenImageDenoiseが選択可能。
OpenImageDenoiseは高品質で速いため、初心者にもおすすめです。
GPUを使用
GPUを使用することでレンダリングが高速化されます。

OFF

ON
ライトパス(Light Paths)
光がシーン内でどれだけ複雑に反射・屈折するかを指定します。Cyclesのパワーをフルに発揮するための重要な設定です。
最大バウンス数(Max Bounces):

合計
光が何回反射・屈折するか。デフォルトは12。室内シーンでは3-8が推奨されます。
ディフューズ、光沢、伝播, 透過
それぞれの反射・屈折回数を指定できます
(例えば金属が多い場合は光沢をあげる、ガラスが多い場合は伝播をあげる、など)
合計で指定した回数が最大になります。

0

8
出力プロパティの設定
レンダリング結果を画像として保存するために、出力プロパティを設定します。
アニメーション(連番ファイル)をレンダリングする際にフレームレート、フレーム範囲、ファイルフォーマットを指定しますが、今回は静止画のみをレンダリングするので、解像度に関しての説明を行います。

解像度(Resolution)
レンダリング解像度(Resolution)はシーンのサイズや要求される品質に依存します。解像度を高くするほど詳細な画像が得られますが、レンダリング時間も増えます。
1920×1080(フルHD)が基本設定として推奨されます。

アイコンをクリックすると、主要な解像度プリセットから選ぶことが出来ます。
レンダリングの実行
すべての設定が完了したら、レンダリングを実行します。
レンダーウィンドウから最終的な静止画を保存します。
レンダリング開始
全ての設定を確認したら、メニューの「レンダー(Render)>画像をレンダリング(Render Image)」を選択して、レンダリングを開始します。

レンダーメニューから「画像をレンダリング(Render Image)」を選択してシーンをレンダリングします。

レンダーウィンドウが開きレンダリングが開始します。 左上のテキストで前回の画像の完了時間、現在の画像の経過時間、残り時間がリアルタイムで確認できます。
納得がいく状態になるまでレンダリングと修正作業を繰り返すことで、画像を作り込んでいきます。
レンダリングを行う際のコツ
レンダリングと修正作業を繰り返すことで、理想の画像に近づけていく作業は、3DCG作業の中でとても楽しい工程の一つではありますが非常に時間のかかる作業です。この作業を効率化することで画像の更なるクオリティアップも期待できます。
以下のことを気に留めておいてください。
リファレンス(お手本)画像を用意する。
画像をレンダリングする準備段階で、Webページの画像検索など行い、自分が理想とする画像をリファレンス(お手本)画像を用意します。画像は1枚でも複数でも構いません。具体的な完成像をイメージしておくことでゴールが明確になり、作業段階で悩む時間が軽減されます。

テストレンダリングは低画質で行う
Blenderのデフォルト設定でフルHDの画像をレンダリングする場合、マシンパワーにもよりますが、通常3~5分程度必要とします。確認のためのレンダリング時間が長いと、トライアンドエラーの回数も制限されますので、テストレンダリングでは低い画質の設定や解像度を下げた状態で行い、最終レンダリングの際に画質をあげると時間短縮につながります。
スロット(Slot)に画像を格納して比較する
レンダリングした画像はSlotというタブを変更することで複数格納することが出来ます。複数のレンダリング画像を比較することでより細かく画像を確認することが出来ます。

画像の保存
レンダリングが完了したら、画像ファイルとして保存します。
画像エディターで「画像(Image)>名前を付けて保存(Save As)」を選択します。

①ファイルフォーマットを指定します。
保存形式はPNGかEXRが一般的です。PNGは圧縮されていない高品質な画像を保存するのに最適です。
②ファイル名を指定します。
既に同じ名前のファイルがある場合は背景が赤くなります。
③画像を別保存を選択します。
既に同じ名前のファイルがある場合は上書きされます。

まとめ
このページでは、Blenderで室内アセットを使用した静止画レンダリングの基本的な手順を解説しました。
カメラの設定を行いました。
レンダリング設定を行いました。
解像度(Resolution)の設定を行いました。
レンダリングを実行しました。
Blenderのカメラの特性やCyclesのパラメーターを理解することで、初心者でもフォトリアルな画像のレンダリングが可能です。過去のマテリアル設定、ライティングのページと併せて設定することでより高いクオリティの画像の作成が見込めます。
参考ページ:Blender公式マニュアル – Cycles