🎥【海外の映画祭に応募】＃６「映画祭応募サイト」を活用する

映画制作は、制作すること自体がクリエイティブで楽しい作業ですが、完成した映画を発信して反応を得ることは、さらにクリエイティブで楽しい作業です。特に映画祭での公開は、作品をより広く知ってもらうことができます。
　そこで、「映画祭応募サイト」が登場します。映画祭応募サイトは、映画祭への出品をスムーズかつ効率的に行うためのオールインワンのプラットフォームです。

なぜ「映画祭応募サイト」を使うのか？

　なぜ映画祭応募サイトを使うべきなのでしょうか？以下では、その理由を5つ挙げてみます。

「映画祭応募サイト」ですべての映画祭に応募できるわけではありません。例えば世界3大アニメーション映画祭の一つであるアヌシー国際アニメーション映画祭は公式HPの応募フォームで応募を受け付けています。映画祭の公式サイトなどで応募形態を必ず確認してください。

映画本編の提出方法は？

「映画祭応募サイト」に映画製作者のプロフィールを登録した後、サイトに直接本編の.mp4動画をアップロードします（Youtube,Vimeoなど外部動画投稿サイトのリンクを張り付けることも出来ます）。アップロードした動画は、ご自身が応募した映画祭が閲覧、ダウンロードすることが出来ます。また、ダウンロードの際にパスワードロックをかけるなどの制限をつけることも可能です。

応募した映画祭に入選（OfficialSelencion）すると映画館などで上映する為の高品質データを映画祭に再提出します。比較的小規模の映画祭ではアップロードした.mp4の動画ファイルを直接映画館で上映するケースも多いです。

提出した映画の著作権は？

　提出した映画の著作権は映画製作者に帰属します。映画祭への出品に際しては、映画製作者が映画の所有権を保持し、映画祭は映画を上映する権利を許諾する形式が取られます。そして、ご自身のプロフィール、映画情報及び本編の視聴を、すべての人に公開するか、応募した映画祭のみに限定するかなどの、コントロールもご自身で設定可能です。ただし、これは一般論で、個々の映画祭によって細かい規定があり変更の可能性もありますので、特に商業映画を応募する場合は十分注意が必要です。

応募した映画祭が、ご自身のプロフィール、映画情報及び本編の視聴をどのように扱うかについては、映画祭応募サイトの各映画祭ページ及び各映画祭の公式サイトに詳細な説明があります。ご自身のプロフィール、映画が、意図しない形で使われないように必ず確認してください。

　自主制作映画や、学生さんが制作した映画においては、見落とされがちな点なので、意識をもってもらえると嬉しいです。

応募の際の料金は？

　「映画祭応募サイト」登録の際には料金はかかりません。映画祭に応募する際に「映画祭応募サイト」に手数料を支払う必要があります。また、映画祭によっては応募の際に別途応募料が必要です。後述する映画祭応募サイトの場合、FilmFreeway,WFCNは映画祭側の応募料金の数パーセント、FestHome,ShortFilmDepotは定額チケット制です。また、チケットの一括購入や月間、年間のメンバーシップ制度の登録などにより手数料を抑えられる場合があります。

映画祭によっては、公式サイトのフォームと「映画祭応募サイト」の両方で募集を行っています。その際は、公式サイトでの応募のほうが割安という場合があります。利便性をとるか、金額をとるか、各自の判断にお任せいたします。

具体的にはShort Shorts Film Festival & Asiaなどです。

映画祭応募サイト4選

ここではFilmFreeway、SHORTFILMDEPOT、Festhome、WFCNの４サイトを紹介し、それぞれの特徴と私が使ってみた際のデメリットについても記述します。

FilmFreeway

FilmFreewayのメリット

映画祭の数が多い

FilmFreewayは世界中の200万人以上の映画製作者、脚本家、アーティストが利用しており、世界中の映画祭や脚本コンテストを11,000以上掲載しています。他のプラットフォームに比べて登録されている映画祭の数が多く、ジャンルや地域に関係なく、多様な選択肢があります。

使いやすさ

FilmFreewayのインターフェースは非常に使いやすく、直感的です。作品のアップロードや応募手続きが簡単に行えるため、ストレスなく作業を進めることができます。

手数料とコスト

FilmFreewayは他のプラットフォームと比べて手数料が低く、無料の映画祭の場合、手数料は無料となります。学生向けの映画祭は無料の場合が多いので、映画祭応募サイトの恩恵を無料で受けることが出来ます。

FilmFreewayのデメリット（個人の感想）

映画祭の質

　映画祭が多いこともあり質は玉成混交の感があります。映画祭ページは存在するものの活動の実績を公表しない映画祭。全員に受賞月桂樹を授ける審査の怪しい映画祭（有料トロフィーの販売がセットになっているケースが多い）なども存在します。このような「エントリー料詐欺」に引っかからないために、特に有料の映画祭応募の場合は注意です。

SHORTFILMDEPOT

SHORTFILMDEPOTのメリット

短編映画祭に特化した映画祭応募サイト

SHORTFILMDEPOTは、短編映画に特化したプラットフォームです。そのため、短編映画製作者が自分の作品を適切な視聴者に届けるための最適な環境が整っています。短編映画を作成している皆さんにとって、作品がより多くの人々に届く可能性が高まります。

特色のある映画祭

SHORTFILMDEPOTは欧州のサイトということで、欧州の映画祭を中心に、他の映画祭応募サイトでは見られない特徴的な映画祭に応募することが出来ます。これには、ヨーロッパ映画賞、BAFTA、Goya、Mélièsd’Or、などの予選フェスティバル、FIAPP認定フェスティバルなどが含まれ、フランスの権威あるクレルモンフェラン国際短編映画祭もこのサイトで応募することが出来ます。

シンプルなサイト構成

　SHORTFILMDEPOTはシンプルなサイト構成のため、初心者が最初に登録するサイトとして一連の流れを確認する上で非常にわかりやすいサイトとなっています。他の映画製作者との交流の機会が設けられていないことも、逆に映画祭応募に特化することができ、初めて映画祭応募サイトに登録する人にとって、予期しない映画情報公開などのリスクを軽減出来ます。

SHORTFILMDEPOTのデメリット（個人の感想）

サイトの利便性

サイト自体の反応速度が遅く、ページ移動の度に3秒程度待つ傾向があります。また、映画祭を紹介する箇所と応募する箇所が分かれおり、若干混乱する場面があります。

Shortfilmdepotから2024年4月末に新バージョンへと移行するアナウンスがありました。 すべてのデータはリニューアル後も引き継がれるとのことです。
※下記は公開されたプレビュー画面

Festhome

Festhomeのメリット

日本語に対応（一部）

今回紹介している映画祭応募サイトの中で、唯一日本語に対応しているサイトです。もちろん他のサイトでも翻訳機能を使えば日本語で文章を確認することは出来ますが、変換が煩わしい場合も多いので、日本語を母国語とする皆さんにとってユーザーフレンドリーなサイトといえるのではないでしょうか。

品質重視の映画祭

Festhomeに登録されている映画祭は、品質を重視する傾向があります。映画業界での評判や歴史、審査基準などを考慮して選定された映画祭が多く、高い信頼性が期待できます。そのため、作品をより多くの観客や業界関係者に届ける機会が得られます。

ユーザーサポートの充実

Festhomeは応募の手続きや技術的な問題に関するサポートが充実しており、映画製作者が円滑に作業を進めることができます。また、審査結果や進捗状況など、重要な情報が適切に伝えられるため、安心して作品を提出することができます。

Festhomeのデメリット（個人の感想）

複雑なサイト構造

　これは、メリットでもありますが、Festhomeは非常に多機能なサイトです。それゆえに、初心者にとってはご自身の今いる場所や勝手がわからなくなるケースがあります。慣れれば問題はないのですが、個人的には「他サイトで一連の応募の流れを経験した後でFesthomeに登録する」という順番をお勧めします。

WFCN(World Film Communities Network)

WFCNのメリット

洗練されたユーザーインターフェース

WFCN (World Film Communities Network)は2020年1月に設立された後発の映画祭応募サイトです。先発のFilmFreewayなどの長所を踏襲しながら、新しい要素も取り入れ、より洗練された体験を提供するサイトです。

国際的なネットワークの構築

WFCNの特徴は、映画制作者同士のコミュニティの構築に重点を置いていることです。応募や上映に主眼を置く他の映画祭応募サイトとは異なり、WFCNは世界のさまざまな地域の映画制作者同士との交流が可能です。映画制作者は同業者と交流し、アイデアを交換し、将来のプロジェクトに向けて協力することができます。

登録者の映画が視聴可能

WFCNは他の映画祭応募サイトと異なり、映画製作者の交流に特化した映画祭応募サイトです。映画製作者が任意で設定を行うことにより、登録した映画の一部を他の映画製作者も視聴出来ます。視聴した映画をもとに映画製作者とコンタクトを取ることで新たなネットワークをすくことも可能です。

WFCNのデメリット（個人の感想）

情報開示のリスク

映画製作者の交流に特化した「SNS＋映画祭応募サイト」という建付けのため、ご自身のプロフィール、映画情報を映画祭以外の人が知る機会が多く、公開情報を制限したい場合は注意が必要です。特に、デフォルト設定では検索サイトにご自身の映画の情報がリストアップされることを覚えておいてください。

映画製作者同士のコミュニケーションに特化したサイトとしてShortverseがあります。

おすすめは？

今回紹介した映画祭応募サイトの順番（FilmFreeway、SHORTFILMDEPOT、Festhome、WFCN）でおすすめします。FilmFreewayをおすすめする理由は、扱う映画祭の数、サイトの使いやすさ、そして特に学生さんにとってありがたい手数料無償の映画祭がある点です。WFCNはまだまだ細かい使い勝手に更新の余地がありますが、次世代の映画祭応募サイトとして今後に期待したいと思います。

というわけで、次回はFilmFreewayの具体的な活用法になります。

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まとめ

映画制作者が、ご自身の映画を海外映画祭に応募する際、是非活用してほしい「映画祭応募サイト」について解説しました。具体的にFilmFreeway、SHORTFILMDEPOT、Festhome、WFCNの４サイトを紹介し、それぞれの特徴とデメリットについても記述しました。映画祭への出品をスムーズかつ効率的に行うためのオールインワンのプラットフォームを使うことで、ご自身の映画の海外発信にお役立てください。