「映画情報」を作成する
前回に引き続き、映画祭に応募するための情報です。今回は、ご自身の「映画情報」を英文でまとめていきます。かなりの量があり面食らうかもしれません。ただ、これを埋めてしまえば、ほとんどの映画祭や応募サイトに応募することが出来ます。簡単に書ける情報や翻訳を必要としない情報から、文章にひと工夫必要なものもあるので、描きやすいものから埋めていきましょう。
「映画情報」チェックリスト
- タイトル(Title)
- プロジェクトタイプ(Project Type)
- ジャンル(Genres)
- 上映時間(Runtime)
- 完成日(Completion Date)
- 制作予算(Production Budget)
- 原産国(Country of Origin)
- 撮影国(Country of Filming)
- 言語(Language)
- 撮影フォーマット(Shooting Format)
- アスペクト比(Aspect Ratio)
- 上映フォーマット(Screening Format)
- フィルムカラー(Film Color)
- 初監督作品(First-time Filmmaker)
- オリジナル音楽(Original music)
- オリジナル脚本(Original script)
- 学生プロジェクト(Student Project)
- クレジット(Credits)
- あらすじ(Synopsis)
- 監督声明(Director Statement)
「映画情報」内訳
タイトル(Title)
応募する映画のタイトルを記載します。母国語タイトルと英語タイトルを両方書く場合が多いです。
Original:「君たちはどう生きるか」
English:「The Boy and the Heron」
という具合です。
かっこいい英題を考えてください。母国語タイトルが英語の場合は必要ありません。
プロジェクトタイプ(Project Type)
今回の映画がどんな属性を持っているか答えます。記載されている項目にチェックを入れることが多いです。映画祭応募サイトFilmFreewayでは以下の項目から選ぶ形式です。該当するものを複数選んでください。
- Animation(アニメーション)
- Documentary(ドキュメンタリー)
- Experimental(実験映画)
- Feature(長編映画)
- Music Video(ミュージックビデオ)
- Short(短編映画)
- Student(学生作品)
- Television(テレビ番組)
- Web / New Media(ウェブなどで上映する作品)
- Other(その他)

学生さんは”Student”にチェックを入れます!
ジャンル(Genres)
映画のジャンルを記載します。以下に代表的な映画ジャンルを記載しますのでご自身の作品において適当と思われるものを記述してください。複数回答可の場合が多いです。
- ナラティブ(Narrative)
物語やストーリーテリングを中心とした映画。登場人物の発展や物語の展開を追います。 - ドキュメンタリー(Documentary)
実際の出来事や人物、社会的な問題に焦点を当てた映画。実際の映像やインタビューを使用することが多いです。 - サイエンスフィクション(Sci-Fi)
科学技術や未来、宇宙、タイムトラベルなど、科学的概念に基づいた映画。 - ホラー(Horror)
観客に恐怖や不安を引き起こすことを目的とした映画。超自然的な要素やサスペンスが含まれることもあります。 - コメディ(Comedy)
笑いやユーモアを提供することに重点を置いた映画。社会的な風刺やパロディを含むこともあります。 - ファンタジー(Fantasy)
魔法や超自然的な要素が特徴の映画。現実世界とは異なる架空の世界が舞台となることが多いです。 - ミュージカル(Musical)
音楽、歌、ダンスが重要な要素として組み込まれている映画。物語の進行に音楽が密接に関わっています。 - ミュージックビデオ(Music Video)
音楽を視覚的に表現した短編映像作品。アーティストの楽曲に合わせて、ダンス、ストーリーテリング、抽象的な映像などを通じて曲のテーマや感情を伝えます。 - スリラー(Thriller)
緊張感や興奮を引き起こすよう設計された映画。サスペンスやミステリーの要素を含み、観客を飽きさせないストーリー展開が特徴です。 - アクション(Action)
物理的なアクション、追跡シーンや戦闘シーンを中心にした映画。高いエネルギーとスピード感が魅力です。



英語圏でSFというジャンルはサイファイ(Sci-Fi)と言うことをぜひ覚えておいてね!
その映画がどのような技法で作られたかを説明する場合もあります。以下、例を挙げます。
- ストップモーション(Stop Motion)
一連の静止画像を連続して撮影し、動いているように見せるアニメーション技法。人形や粘土や砂などが用いられます。 - ハンドドローンアニメーション(Hand-Drawn Animation)
アーティストが手で一枚一枚描いた画像を使用して作られるアニメーション。伝統的なアニメーションの形式です。 - ロトスコーピング(Rotoscoping)
実写の映像をトレースしてアニメーションを作成する技法。リアルな動きや表現をアニメーションに取り入れることができます。 - デジタルアニメーション(Digital Animation)
コンピュータソフトウェアを使用して作成されるアニメーション。3DCGやベクターアニメーションなどが含まれます。 - 3Dコンピュータグラフィックス(3DCG)
コンピュータを使用して作成される立体的な画像やアニメーション。リアリティのあるテクスチャや光の表現が可能です。 - VR(Virtual Reality)
VR技術を使用して作成された映画。視聴者はVRヘッドセットを通じて360度の視界を持ち、映画の世界に没入することができます。 - 人工知能(Artificial Intelligence , AI)
人工知能技術を活用して映像編集、特殊効果、キャラクターのアニメーション制作、さらには脚本の生成や音楽の作曲まで、さまざまなクリエイティブなプロセスを自動化または強化する技法。



特にAIには神経をとがらせています。使用を一切禁止している映画祭もあるので、使用した個所がある場合は詳細に説明しましょう。
上映時間(Runtime)
映画の全長を分単位で記載します。映画祭では上映時間が重要な要素です。特に短編部門(Short Film)、長編部門(Feature Film)等、上映時間によって応募する部門が変わるので、この項目は秒単位で正確に記述します。
単位は以下の通り
短編部門(Short Film)、長編部門(Feature Film)の境目は一般的には40分と言われていますが、映画祭によって〇〇分以内と基準が異なるので、必ず映画祭側の情報を確認する必要があります。
完成日(Completion Date)
映画が完成した日付を記載します。映画祭では主に最新作を希望しており、応募できる映画の賞味期限は大体1年から2年が一般的です。応募の条件に「〇〇年以後に完成した作品」書かれていることが一般的なので、この項目も正確に記述してください。
順番は地域で異なります。
紛らわしいので月の箇所は単語(Jan. Feb. Mar. …)で書くことが多いです。
制作予算(Production Budget)
映画の制作にかかった総予算を記載します。この項目を必要とする映画祭はあまり確認できなかったのですが、まれにインディペンデント(独立系)映画祭において、低予算で作成されたことに価値を置いて、制作費〇〇ドル以内と言うルールを強いている映画祭もあります。
原産国(Country of Origin)
映画が製作された国を記載します。特に地域や民族に注目した映画祭の場合は、映画が作られた国や製作者の国籍を重要視します。



Japanese Serbian Film Festival(日本セルビア映画祭)のように、映画を通して二国間の文化交流を行うイベントもあります。
撮影国(Country of Filming)
映画の撮影が行われた国を記載します。特に映画祭がその土地のプロモーションや観光目的などで使用される場合、対象の国が含まれているか確認する場合があります。撮影ありきの映画を扱う映画祭で重要視される項目なので、撮影を行わないアニメーション作品やデジタル作品の場合はDigitalあるいは原産国を書けば問題ありません。
言語(Language)
映画の主要な使用言語を記載します。台詞や歌詞、文字情報などです。
撮影フォーマット(Shooting Format)
映画の撮影に使用したフォーマット(デジタル、35mmフィルムなど)を記載します。近年では、スマートフォンのカメラで撮影した映像作品を募集する映画祭も増えてきました。撮影を行わないCGやPCを使用したアニメーションの場合は「CGI」「Digital Animation」などで書くと分かりやすいでしょう。



shortfilmdepotでは具体的なアニメーションの技法「Drawing」「2D / 3D computer」等にチェックを入れるAnimation techniques :
使用したソフトを記述するSoftware used :
という副次的な項目があります。
アスペクト比(Aspect Ratio)
映画の画面の比率を記載します(例:16:9、4:3など)。近年では、スマートフォンなどで撮影した縦長(9:16)の画像を扱うバーティカル(Vertical)フォーマットなども見られるようになりました。私たちが良く使うHDフォーマット(1920*1080)のアスペクト比は16:9です。
上映フォーマット(Screening Format)
映画の上映に使用するフォーマットを記載します。こちらも映画祭の基準を満たす必要がある重要な項目なので、よく読んでもらいたいところです。一般的には.mp4をエンコードする際に使用するMPEG-4 H264形式が多い印象です。小さな映画祭では審査用の.mp4をそのまま映画館で上映してしまうケースが多い印象です。規模の大きな映画祭の場合、入選した映画に対して追加で.DCPフォーマットという映画館で上映するための高画質な動画ファイルを要求する場合があります。そのタイミングでDCP-o-maticといった無料のエンコードソフトを利用して作成することが出来ます。
フィルムカラー(Film Color)
映画がカラーかモノクロかを記載します。FilmFreewayなどの映画投稿サイトでは、両方(Black &White and Color)を含んだ3択です。



拙作”Departure”は白黒からカラーに画面が切り替わるところがオチなので盛大にネタバレ項目です。
初監督作品(First-time Filmmaker)
この作品が初めての監督作品かどうかを記載します。YesかNoで答えます。初監督作品に焦点を当てた映画祭も多数存在するので確認用です。
オリジナル音楽(Original music)
映画で使用された音楽がオリジナルのものかを記載します。既存の楽曲を使用している場合は、著作権の問題がクリアされているかをチェックします。上映の際、映画祭側が版権音楽の使用料金を支払うことは一切ないので、後々揉めない為にも事前にクリアにしておきましょう。
オリジナル脚本(Original script)
映画の脚本がオリジナルかどうかを記載します。こちらも著作権に関わる話なので必ずクリアにしておく必要があります。
学生プロジェクト(Student Project)
この映画が学生によるプロジェクトかどうかを記載します。学生さんはここでYesを選択します。StudentやEducationalといった名前を冠した「学生映画祭」や映画祭の「学生部門」に応募される作品はここでチェックされます。
クレジット(Credits)
映画製作に関わった主要な人物(監督、プロデューサー、脚本家、アニメーターなど)の名前を記載します。大抵の場合、役職ごとにフォームが用意されています。グループ制作の場合は各クレジットに担当した人の名前を当てはめていってください。役職に複数の人がいる場合はフォームの下付近にある+のボタンを押すなどしてフォームの数を増やしていきます。
あらすじ(Synopsis)
映画の簡潔なあらすじを記載します。主にスタッフや審査員に映画の内容を伝える為、そして入選した際は映画を紹介するウェブページやパンフレットに使用されるので重要な要素です。通常文字数制限があり、フォームにコピー&ペーストした際、制限を超えた文字は入力されず文章が途中で切れた状態になるので注意が必要です。
英文を必要とされますので、まずは日本語で文章を書き、ChatGPTなどのAIに英訳してもらい、その後Google翻訳やDeeplなどの機能で再度日本語に戻すことでダブルチェックを行ってください。
「オチを書いたほうがいいのか?」という質問に関して、私見ですが「文字数制限がある場合はオチは書かない。ない場合はオチまで書く。」です。文字数制限はかなりシビアなので、お話をすべて説明するとかなり駆け足な文章になる可能性があります。そして、前述したように、入選の際には観ていない人に向けた情報になるのでワクワク感をあおるような書き方にしていきます。



私は最初オチまで書いていましたが、入選の際の公開情報では、映画祭側で後半(オチの部分)をカットしてくれていました。
映画投稿サイトfesthomeではSHORT SYNOPSISとLONG SYNOPSISの2種類を書く項があります。以下はそれに則ってSHORT SYNOPSISはオチなし、LONG SYNOPSISはオチあり、で書いています。
監督声明(Director Statement)
監督がこの作品に対するメッセージを自由に書ける項です。映画投稿サイトで確認するとFilmFreeway,WFCNにはこの項がありますがfesthome,shortfilmdepotにはありません。必須ではありません。自由記述なので好きなことを書きましょう。傾向としては、
- 企画意図(なぜこの作品を作ったか)
- 作品に込めたメッセージ
- ターゲット(どんな人にみてもらいたいか)
- 作品のアピールポイント(どこに注目してほしいか)
といったことを書くと良いと思います。長文になる場合は見出しを付けるなど読みやすさを工夫しましょう。
例)
Aspiration Towards Evolution:
The genesis of “Departure” is deeply rooted in my experiences as a minority within society. The anxiety I felt during my childhood over my underdeveloped emotions and physical capabilities forms the core motivation behind this film.
Journey with Technology:
“Departure” delves into the intricate relationship between technology and art. It presents a visual journey through the evolution of art across history, traversing architecture, painting, and film. The latter half of the movie, in particular, showcases impressionistic expressions through a combination of hand-drawn illustrations, computer-generated imagery, and AI-assisted visuals, intuitively indicating that art evolves alongside technology, with AI acting as a catalyst in this progression.
Resonance of Visual Style and Technological Choices:
In the narrative’s midst, the protagonist experiences visual transformations that symbolize the fusion of technology and humanity. This approach explores the role of technology in modern society and its impact on our perceptions, providing a mirror to our evolving relationship with technological advancements.
Embedded Message:
Through “Departure,” I aim to engage the audience in a journey of self-reflection and transcendence amidst the swift changes in society. Sharing the belief that “technology, especially AI, serves as a mirror reflecting ourselves,” I hope to elucidate that the anxieties and hostilities we may hold towards evolving entities mirror our introspections. This film is intended to prompt each viewer to find deeper meaning and purpose in our shared existence within this era



ここまで長いと読んでもらえるか微妙ですね。映画祭によっては2,000本以上の作品を見ることになるので、読まれない前提で「読んでくれたらラッキー」くらいに考えたほうが無難です。
まとめ
これで映画祭に応募する準備が整いました。お疲れさまでした!もちろん完了後に間違いや修正箇所があれば「映画祭応募サイト」などから変更を行えますので、適時ブラッシュアップしていきましょう。今回はご自身の「映画情報」を英文でまとめる作業を行いました。次回は映画投稿サイトFilmFreewayの具体的な投稿フォームの記述についてです。

