QuixelBridgeのマテリアルを使用してBlendMaterialを作成する
Unreal Engine 5の背景制作において、Megascan3DAssetsなどの既存アセットは大変便利なのですが、背景に対しアセットの見た目が浮くという問題が度々発生します。特に経年劣化が激しい場所などでは、マテリアル側の色調補正だけでは対応が難しい局面が存在します。回避策の一つとして今回はQuixel BridgeのBlendMaterial機能を活用した、既存テクスチャの上に別途テクスチャをブレンドすることで世界観になじませる方法を学びます。

BlendMaterialはLandscapeメッシュに対応していません。Landscapeに複数のテクスチャをブレンドさせたい場合は以下のページをご参考にしてください。

BlendMaterialはバージョン5.2時点でNaniteに対応していません。動画制作などプリレンダリングの場合は問題ありませんが、ゲームなどリアルタイムで使う場合は描画負荷を確認しながら適材適所で使っていきます。
【Unreal Engine 5】制作準備
【Unreal Engine 5】プロジェクトの作成

カテゴリー「ゲーム」から「ブランク」を指定します。「プロジェクト名」を指定して「作成」をクリックします。
新規レベルの作成

ファイル > 新規レベル
を選択します。

「新規レベル」ウィンドウより、今回は「Basic」を選択し「作成」をクリックします。
既存オブジェクトの削除

既に存在する地面オジェクトは使いません。
選択→DELキーで削除します。
地面オブジェクトの追加

「選択モード」をクリックして、プルダウンメニューから「モデリング」をクリック。
モデリングモードに移動します。

作成 > Rectangle(長方形)をクリックします。

ビューポートの任意の場所にクリックするとRectangle(地面)オブジェクトが作成されます。
場所は後から移動が可能です。
地面オブジェクトの形状変更

地面オブジェクトの大きさと分割数を変更します。
①大きさ
Width 500(5m)
Depth 500(5m)
②分割数
Width Subdivision 50
Depth Subdivision 50
③「承諾」ボタンで変更を確定します。
モデリングモードの終了

地面オブジェクトの作成が終了した後は「モデリングモード」をクリックして、プルダウンメニューから「選択」をクリック。
選択モードに戻します。
地面オブジェクトの分割数の確認
地面オブジェクトの分割数を確認します。


ビューポートの「ライティングあり」の箇所をクリックして「ワイヤーフレーム」に変更するか
ショートカットAlt+2
でワイヤーフレームの状況を確認できます。
ショートカットAlt+4
で、もとの「ライティングあり」の状態に戻せます。
Quixel Bridgeを使用する
Quixel Bridgeとは
Quixel Bridgeは、3Dアセットの管理とエクスポートを簡単に行うためのツールです。主に高品質な3Dスキャンによって生成されたアセットライブラリであるMegascansを利用するために使用されます。
Quixel Bridgeの主な機能
アセット管理: Megascansのアセットを閲覧、ダウンロード、管理することができます。
エクスポート: Unreal EngineやBlenderなどのDCCツールにワンクリックでアセットをエクスポートできます。
無料利用: Unreal EngineやTwinmotionで使用する場合は無料で利用可能です。
Quixel Bridgeの商用利用について
Quixel Bridgeの商用利用にはいくつかの条件があります。個人のかたや学生さんが個人制作に使用する際は、Epic Gamesのアカウントでサインインし、Unreal EngineやTwinmotionで使用する場合は無料で利用できます。MayaやBlenderなど他のソフトウェアで使用する場合は別途サブスクリプション契約が必要です。
Quixel Bridgeの起動
選択モード横の+ボタンをクリック、プルダウンメニューから「Quixel Bridge」を選択します。または、ウィンドウ>Quixel Bridge を選択します。

画面右上+のアイコンからQuixel Bridgeを選択します。

ウィンドウ>Quixel Bridge
を選択します。
サインイン
Quixel BridgeはUnrealEngineとは別扱いのソフトなので、最初にサインインします(サインインしないとアセットをダウンロードできません)。

メールアドレス、パスワードが要求される場合は、入力してください。
サインインをクリックします。


人型のアイコンをクリックして、ご自身のメールアドレスが表示されればOKです。
マテリアルの選定
Quixel Bridgeウィンドウ上部の、
検索ウィンドウに以下のキーワードを入力して、マテリアルを選定します。
「Surface」と入力してEnterキーを押してください。マテリアルが検索されます。
「Forest」と入力してEnterキーを押してください。「Forest」に関係するアセットが検索されます。

①お好きなマテリアルをえらんでクリックします。右側に詳細が表示されます。
②今回は1番解像度の高いテクスチャであるHighest Qualityを選択します。
③Downloadをクリックします。

暫くすると「Add」ボタンが点灯するのでクリックします。

暫くするとコンテンツブラウザーが表示され、
Megascans/Surfaces
というパスにDetailed_Mossy_Rock_Texture_xicmeh0rというフォルダが追加され、中にマテリアルとテクスチャが追加されたことが確認できます。
Asset ID

アセット末尾の文字列「xicmeh0r」はマテリアルの固有のAssetIDです。
からもコピーすることが出来ます。
Quixel Bridgeの検索ウィンドウにAssetIDを打ち込むことで検索することが出来ます。
今回は3種類のマテリアルを使用します。
其々お好きなもので構いません。ダウンロードの後「Add」でコンテンツブラウザーに追加してください。


Blend Materialの作成

元絵(一番下のレイヤー)となるマテリアルを選択します。
Quixel Bridgeでの作業

①任意のSurfaceアセットを選択します(選択したマテリアルと同一のものである必要はありません)。
② マークをクリックします。

追加するマテリアルのパスと名前を指定します(任意で構いません)。
「マテリアルブレンドの作成」をクリックした後、ウィンドウを閉じます。
作成されたBlendMaterialの確認

作成したマテリアルをダブルクリックします。
BlendMaterial外観

02-Base Layer 下のレイヤーのテクスチャです
03-Middle Layer 真ん中のレイヤーのテクスチャです
04-Top Layer 上のレイヤーのテクスチャです
現在其々Baseマテリアルのテクスチャが割り当てられているので、今回は03-Middle Layerと04-Top Layerのテクスチャを変更します。
00-Global 設定

①00-Global をダブルクリック(或いは
②Base,Middle,Top,Puddleレイヤーにチェックを入れます。
03-Middle Layer 設定

①03-Middle Layerをダブルクリック(或いは
②Middle Layer Albedo Mapのテクスチャ項目にMiddle用テクスチャの名前末尾_Dをドラッグ&ドロップ
③Middle Layer ARD Mapのテクスチャ項目にMiddle用テクスチャの名前末尾_ORDpをドラッグ&ドロップ
④Middle Layer Normal Mapのテクスチャ項目にMiddle用テクスチャの名前末尾_Nをドラッグ&ドロップ
04-Top Layer 設定

①04-Top Layerをダブルクリック(或いは
②Top Layerのマップにチェックを入れます。
③Top Layer Albedo Mapのテクスチャ項目にTop用テクスチャの名前末尾_Dをドラッグ&ドロップ
④Top Layer ARD Mapのテクスチャ項目にTop用テクスチャの名前末尾_ORDpをドラッグ&ドロップ
⑤Top Layer Normal Mapのテクスチャ項目にTop用テクスチャの名前末尾_Nをドラッグ&ドロップ

Blend Materialを保存してウィンドウを閉じます。
Blend Materialの適用

Blend Materialを先ほど作成した地面オブジェクトに適用します。
直接ドラッグアンドドロップでOKです。
Blend Materialのペイント
現状ではBlend MaterialはBase Layer のテクスチャのみを表示している状態です。地面オブジェクトの頂点にブレンド情報を適応することでMiddle Layer Top Layerのテクスチャをブレンドしていきます。

「選択モード」をプルダウンして「メッシュペイントモード」に変更します。
カラータブ > ペイント
を選択します。
ペイントモード詳細

SIZE ブラシの大きさを変更します。
Strength 色を塗る際の濃さを変更します。
Falloff ぼかし具合を調節します。(0ぼけないー1ぼける)
頂点ペイント
チャンネル それぞれのチャンネルにチェックを入れることでレイヤーテクスチャを反映させます。
☑Red Middle Layerテクスチャ
☑Green Top Layerテクスチャ
☑Blue Puddle(水たまり)
Middle Layerテクスチャの付加

①Paint Colorを黒に変更します。
②☑Red(Middle Layerテクスチャ)にチェックを入れます。
③ビューポート上にマウスドラッグでMiddle Layerテクスチャ情報を塗っていきます。
Top Layerテクスチャの付加

①Paint Colorを黒に変更します。
②☑Green(Top Layerテクスチャ)にチェックを入れます。
③ビューポート上にマウスドラッグでTop Layerテクスチャ情報を塗っていきます。
Puddleレイヤーの付加

①Paint Colorを黒に変更します。
②☑Blue(Puddleレイヤー)にチェックを入れます。
③ビューポート上にマウスドラッグでPuddleレイヤー情報を塗っていきます。

Shiftキーを押しながらブラシをドラッグすることで、ペイント情報の消去が行えます。
BlendMaterialパラメーターによるテクスチャの調整

前述したBlendMaterialのパラメーターには様々なテクスチャの調整箇所があります。こちらの数値を調整することにより、テクスチャを変更、再読み込みをする手間が省けるので積極的に活用してください。以下は代表的な修正パラメーターです。
☑Base Layer Rotation Angle テクスチャの回転
☑Base Layer Normal Strength 法線情報の強さ
☑Base Layer Albedo Controls
Saturation 色の濃さ
Brightness 明度
Contrast コントラスト
☑Base Layer Albedo Tint 色相の追加
☑Base Layer Speculer Default スペキュラ情報の強さ
☑Base Layer Tiliming/Offset
Tiliming X X方向の繰り返し
Tiliming Y Y方向の繰り返し
Offset X X方向のオフセット
Offset Y Y方向のオフセット

Megascan3DAssetsにBlendMaterialを適用する【QuixelBridge】

Quixel Bridge内の膨大なMegascan3DAssetsに対して、上記の方法で任意のテクスチャをブレンドすることが出来ます。エイジングやウェザリング処理を施して、異なるMegascan3DAssetsを風景になじませてみましょう。
Megascan3DAssetsの読み込み

QuixelBridgeを開いて、任意のMegascan3DAssetsを読み込みます。
①Megascan3DAssetsをクリック
②Qualityを確認してDownloadをクリック
③Addをクリックして、コンテンツブラウザに追加します。

コンテンツブラウザに追加が確認出来ましたら、ドラッグアンドドロップでビューポートに追加します。
BlendMaterialの複製

先ほど作成したBlendMaterialのあるフォルダに移動し、BlendMaterialをCtrl+Dで複製し名前を変更します。

複製したBlendMaterialをMegascan3DAssetsのフォルダに移動します。
Base Layer テクスチャの変更
先ほどのMegascan3DAssetsのフォルダに移動します。

①複製したBlendMaterialをダブルクリック、マテリアルエディタを開きます。
②02-Base Layer をダブルクリック(或いは
③Base Layer Albedo Mapのテクスチャ項目にMiddle用テクスチャの名前末尾_Dをドラッグ&ドロップ
Base Layer ARD Mapのテクスチャ項目にMiddle用テクスチャの名前末尾_DpRFをドラッグ&ドロップ
Base Layer Normal Mapのテクスチャ項目にMiddle用テクスチャの名前末尾_Nをドラッグ&ドロップ
④
マテリアルの適用

作成したマテリアルをMegascan3DAssetsに適用します。
Base Layer に正常にテクスチャが読み込まれていれば、この時点で何も変化がありません。
メッシュペイントモードでブレンド情報をペイント

メッシュペイントモードに移行し、先ほどの要領でテクスチャをブレンドしていきます。
地面オブジェクトのテクスチャをブレンドすることにより、Megascan3DAssets特有の「持ってきました感」が軽減されていることが確認できます。
まとめ
- Quixel Bridgeを使用しました。
- Blend Materialを作成しました。
- Blend Materialをペイントしました。
- QuixelBridgeのMegascan3DAssetsにBlendMaterialを適用しました
UnrealEngine以前の背景制作現場では、全てのシーンで配置するアセットを全て手作りしていました。現在では特例のランドマーク(ヒーローアセット)を除いてMegascan3DAssetsなどの既存アセットを配置することで背景を成立させる事例が増えてきています。既存アセットは大変便利なのですが、特に経年劣化が激しい場所などでは、背景に対しアセットの見た目が浮くという問題が発生します。現在の背景制作者はアセットを修正してなじませる能力が必要となります。
今回はそのテクニックの一つとして、Quixel BridgeのBlendMaterial機能を活用した、既存テクスチャの上に別途テクスチャをブレンドすることで世界観になじませる方法を学びました。皆さんの今後の製作の一助になれば幸いです。